16.入谷の米
入谷地区の棚田で、ITを活用しながら、風土を生かし稲自身の自力を最大限に引き出す、最先端の米作りが行われている。
阿部勝善さんらの棚田で行われている、農薬も肥料もまったく使わない究極のササニシキ栽培だ。
ササニシキは、かつて宮城の代表的な品種で、食べ飽きずおかずを引き立て、寿司にはもってこいのさらりとおいしい米だ。
しかし、寒さに弱く、栽培がむずかしいササニシキは、今やほとんど作られなくなってしまった。市場のほとんどを粘りの強い米が占める中で、ササニシキは再び注目を集めている。
惣内山から流れ出す桵葉川(たらばがわ)の滋養豊かな水と、山里の生物多様性が、この無農薬・無肥料の米作りを支える。
水田のセンサーが計測した水位や水温、気温のデータは農家の端末に随時送られ、そのデータをもとに、天候などの条件に合わせて、農家は雑草を生やさないように水を管理する。
稲の栄養は、田んぼをめぐる多様な生きものたちにより供給される。
入谷のササニシキには、深い山々を背景にした豊かな自然の恵みが、ずっしりと詰め込まれている。