09.モアイ
チリ・イースター島から本物のモアイ像が2013年5月25日、南三陸町に贈られた。
約17,000キロメートルのはるかな距離を越えて、南三陸町とチリは、友好関係を深めてきた。そのきっかけは、1960年5月24日未明に、地球の反対側から押し寄せて来たチリ地震津波だった。
東日本大震災後、日智経済委員会チリ国内委員会が、新たなモアイ像を贈ろうと、イースター島の長老会に協力を求めた。
93 歳の老彫刻家マヌエル・トゥキ氏は、皆に呼びかけた。「海に破壊された日本の町に、人々が再びそこで生きていきたいと思えるようなマナ(霊力)を与えるモアイを贈ろう。私は息子とともに、日本の人たちが必要としているモアイを彫る!」長老会は大きな拍手で包まれたという。
イースター島の石を使って彫られたモアイ像が、それまで島外に出たことはなかった。しかし、かつて倒れてバラバラになっていたモアイ像の建て直しを、日本人が支援をしたことがあり、その恩返しにと、イースター島初のプロジェクトが始まった。
息子のベネディクト・トゥキ氏は、石材を切り出して、親戚の彫刻家たちとともにモアイを制作した。
南三陸町を訪れたトゥキ氏は、設置されたモアイに白珊瑚と黒曜石で作られた眼を入れた。眼が入ったモアイは、世界に2体しかないという。
チリも南三陸町も、豊かな海から糧を得、その恩恵に感謝している。そして、海がいとも簡単に人間の命や暮らしを奪うことも熟知している。地震と津波という大自然の脅威を知る二つの場所はあたたかい友情で結ばれた。
「モアイ」は、イースター島のラパヌイ語で「未来に生きる」という意味だ。未来に生きる南三陸町の人々を、このモアイ像は遠い未来まで勇気づけ、見守り続けることだろう。現在、このモアイ像はうみべの広場に設置されている。