ボランティアの方々との出会いが教えてくれた
歌津の海の素晴らしさ
高橋直哉さんは、32歳。20歳から父親と歌津地区泊浜でホタテやカキ、ワカメの養殖を営んできた。高橋家の船の名前は『金比羅丸(こんぴらまる)』。海上交通の守り神を祀った香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)へ、曾祖父が遠路はるばる参拝したことからこの名前がついた。作業小屋の近くには金刀比羅宮の祭神の名前が刻まれた石碑が建てられ、代々の仕事を見守っていた。「漁師を継ぐのは自然なことだった」という。
あの日、泊浜を飲み込んだ津波は、養殖施設のすべてを破壊し尽くした。何もかも失われた浜に、奇跡的に『金比羅丸』が残った。それは再興への唯一の希望だった。しかし、できることは、警備員やがれき撤去などのアルバイトで生計を支えることだけだった。そんななか、全国各地からやってきたボランティアたちとの出会いが、新たな道を見出すきっかけとなる。
これまで、漁師の仕事を見たこともない人たちがワカメの養殖作業を手伝いながら、新鮮なワカメの味に感動したり、『金比羅丸』で沖に出る体験に喜ぶ姿を目の当たりにして、改めて歌津の海の素晴らしさや漁師の仕事の意義に高橋さんは気づいた。そして、養殖業を再開させるのと同時に、『金比羅丸』をフル活用して、訪れた方に郷土の海に親しんでもらえる体験学習プログラムを作った。”誰でも気軽に楽しめる”をモットーに、船釣りができる『手ぶらでフィッシング!』を企画。たくさんの参加者がカレイやアイナメを釣り上げ、満面の笑顔で喜ぶ姿に高橋さんは感動した。「自分たちの海で、多くの人に心から楽しんでもらうことができるのだ。漁業体験のメニューをもっと充実させたい。」
高橋さんは、あたたかくなる5月頃から『手ぶらでフィッシング!』を再開する予定だ。
「ボランティアの方々をはじめ、多くの支えがあってこそ、ぼくたちが復興に向かうことができているということを広く知ってもらいたいですし、何より、南三陸の海がいかに素晴らしいかを体験してもらいたいです。」
はにかみながらも、高橋さんの視線は未来をしっかりと見据えていた。
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Mr.Naoya Takahashi
“It was natural to follow a fisherman’s business,” said Mr
Naoya Takahashi as he took a look back. He started working as
a fisherman to harvest scallops, oysters, and wakame seaweeds
at Tomarihama in Utatsu area with his father, when he was 20
years old.
The tsunami destroyed all the aquaculture facilities
But his ship miraculously survived. Still, he could only do
part-time jobs to support his family. In the midst of all this, he
saw with his own eyes that volunteers from all over Japan were
impressed and pleased by marine work, and realized the
wonderfulness of the sea at Utatsu and the significance of a
fisherman’s work.
Upon resuming aquaculture, he created
learning-by-experience programs for visitors to become
familiar with the sea of Minamisanriku. He was impressed to
see how glad people were to experience fishing from a boat.
“We can let many people enjoy from the bottom of their hearts
our sea. In the future, I hope to enhance the extent of fishery
experience.”
Mr. Takahashi will resume his fishing experience program in
May. “I would like to give more exposure to the fact that
Minamisanriku is being restored thanks to many supporters.
Above all, I hope that many people learn how wonderful the sea
of Minamisanriku is,” he said while gazing confidently at the
future.