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みなレポ

南三陸の「美味しさ」を支えるサステナブルな取り組み

南三陸の「美味しさ」を支えるサステナブルな取り組み

サステナブルな選択を旅行先でも。

世界的にも自然災害が多く発生し気候変動が叫ばれる中、2030年までの世界的目標であるSDGsに対し、アクションを起こす人々が増えてきました。「環境への負荷が少ないサステナブルな観光を体験したい」という観光客のニーズも高まっており、そういった視点で観光地や飲食店を選ぶ動きが増えてきています。

南三陸町では、町全体で持続可能なまちづくりに取り組み、そういった観光客のニーズに応えられる目的地のひとつとしてご提案できると思います。

今回は、飲食店や宿泊施設も巻き込んで行っているサステナブルな食への取り組みをご紹介します。

南三陸町が持続可能なまちづくりを目指したわけ

南三陸町は森、里、海があり、林業や農業、漁業が盛んな自然豊かな地域。里のエリアでは、お米や野菜を育て、海では海藻や牡蠣をはじめとする海産物を育て、地域内での地産地消が、日々の営みとして生活に根付いている地域でした。

しかし、2011年の東日本大震災で発生した津波によって、電気・ガス・上下水道などのライフラインがほとんど断たれ、今までの暮らしの豊かさに改めて気づかされました。自然災害によって、「今までの暮らし」を取り戻すことには時間がかかりました。その経験を基に、地域にある資源を活かし循環する仕組みを整え、人と環境にやさしく災害に強いまちづくりを目指し、復興を進めることにしました。

 

地域で出た生ごみをエネルギーに変える「南三陸BIO」

南三陸町の資源循環の取り組みの中核を担うバイオガス施設として、2015年にアミタ株式会社が設立したのが「南三陸BIO」。南三陸BIOでは、町内から集めた生ごみから、電気や熱などのエネルギーを生み出しています。

もともと町内で集めた野菜の皮や魚のアラなどの生ごみを含む燃えるごみは、町外の焼却施設で処分していましたが、そのコストも膨大なものでした。

そこで、201510月、南三陸BIOの稼働開始に伴い、町内全域で生ごみの分別回収がスタート。各家庭や飲食店から集めた生ごみを町内の南三陸BIOで発酵処理すると、バイオガスと液体肥料(以下、液肥)が生成されます。

バイオガスは南三陸BIO施設内の発電に用いられ、災害時用の非常電力としても使用可能です。液肥は町の人が肥料として、農作地に使用することができます。南三陸BIOは、今まで不要なものとして捨てるだけだった生ごみが、地域にとって役立つものに生まれ変わる場所なのです。

化学肥料不使用の「液肥」は地域の農家が活用し、ブランド化

南三陸BIOの仕組みでつくられた液肥は、チッ素・リン酸・カリがバランスよく含まれており、お米や野菜など、さまざまな作物の成育を助けます。また、重たい液肥を田畑に散布するのは大変ですが、町内の運送会社が液肥散布車で運送・散布を担ってくれるため、農家さんも大助かり。化成肥料と違い、液肥はもともと人が食べられるものから作られているから、安心して利用できるといいます。昨今の化成肥料の価格高騰もあり、液肥を利用したいという農家さんが増え、液肥の需要も高まっているそうです。液肥を使って栽培されたお米は食の循環を表す商品として「めぐりん米」と名付けられ、南三陸町内の商店街や直売所で販売されています。

南三陸BIOに参画して旅行客を受け入れる「民宿下道荘」

南三陸の宿泊施設「民宿下道荘」は、南三陸BIOの協力店舗として分別した生ごみを南三陸BIOに持ち込んでいます。

若旦那の菅原由輝さんは、南三陸BIOへの取り組みに協力することは、ひと手間かけるだけの意義があることだと言います。

「例えば、宴会が9時に終わって、それから残ったものを、南三陸BIOに持っていける生ごみと、持っていけない生ごみとに選別して捨てなくちゃいけないから、手間はかかるんだよね。まとめて燃えるごみとして捨てるよりも、片付けに時間はかかる。そして、その生ごみを南三陸BIOに自分達で持っていく必要もあるし。だけど、この生ごみを循環させて、新しいエネルギーや資源を生み出すためにやっているんだって思って続けているんだ」

飲食店や宿泊施設などの協力店舗は、生ごみを南三陸BIOに持ち込めば生ゴミの処理にかかる費用は無料。下道荘では、今までかかっていたゴミ処理の費用も半分ほどに抑えられるようになったと、菅原さんは言います。

「自分ちの田んぼでを液肥も使っているんだけど、肥料のコストが抑えられて、家族で商売している身としては費用が抑えられるのはありがたい。手はかかるけど、自分達が商売しているうちは、この持続的な取り組みを続けたいって思う」

漁師で獲った食材と南三陸BIOで育てたお米で、おもてなし

 下道荘は自家栽培の野菜やお米、漁師の菅原さんが海から収穫してきた食材を使ったお食事が人気の民宿です。なかでも、南三陸BIOの液肥を使って育てた「めぐりん米」は、宿泊客からも評判だといいます。

このお米は、菅原さんが海で育てた海藻をはじめとする海産物や旬の獲れたての魚介類を、より引き立たせてくれる存在。下道荘では、お客様に出す食材の9割が南三陸産だそう。残りの1割も近隣の市町村から調達して提供している。こういった地産地消の取り組みも、地域では当たり前だが環境に配慮した取り組みです。

菅原さんは「うちで出た生ごみを南三陸BIOに持って行って、そこで作られた液肥をうちの田んぼで利用して、そうして作ったお米をお客さんに提供できる。そういった循環は最高なこと」と語りました。

自ら育てたり、獲ってきたりしたものたちの命を無駄にしない南三陸BIOの取り組みは、生産者にとっても嬉しいものです。「こだわりの食材をお客さんに美味しく食べて欲しい」という思いと、それらの「命を無駄にしたくない」という思い、どちらも叶えてくれるのが南三陸BIOの取り組みなのです。

南三陸でできるサステナブルな観光と食のススメ

南三陸に訪れた際は、地域循環の南三陸BIOに協力しているお店や宿泊施設を選択するのも、サステナブルなアクションのひとつですね。協力店舗の一覧を見て、南三陸での観光の時間を楽しんでみてください。

もちろん、「南三陸の旬な食材を残さず食べる」も素敵なアクションだと思います。美味しく、楽しみながら、環境に配慮した旅を。

南三陸BIO協力店<宿泊施設・飲食店・小売店>の一覧(2021年現在)

出典:生ごみリサイクルの参加事業者について – 南三陸町 (town.minamisanriku.miyagi.jp)

宿泊施設

ニュー泊崎荘下道荘松波荘ながしず荘明神崎荘津の宮荘あおしま荘いりやどさんさん館民宿なか

飲食店・小売店

高貞商店、さんさん商店街レストラン平成の森㈱ヤマウチマルアラ及川商店、日の出荘、志のやランチ&カフェ リッチ―そば処京極和来一心中華屋 飛上朝日堂松のや、レストラン神割、マルタケ、ハマーレ歌津、ウジエスーパー、松原食堂

南三陸BIOでは一般の方も参加可能な視察プログラムをご用意しています。南三陸BIOを見学して、循環型社会の取り組みを学んだあと、南三陸BIO協力店舗で飲食することで、町の資源循環を知り、循環に貢献するといったサステナブルな観光体験も可能です。

南三陸BIOを見学されたい方はこちら>>BIO | 南三陸町概要 | 南三陸町体験学習プログラム (m-kankou.jp)

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