慶應義塾中等部様【潮工房・海藻おしば】実施レポート

■実施概要

【日時】2023年7月12日 9:40~11:40

【団体】慶應義塾中等部様 

【人数】30名

 

 自然豊かな志津川湾は、私たちに食の恵みをもたらすだけではなく、様々な形で活用されています。教育旅行でも、志津川湾をフィールドにした数多くの体験プログラムを提供しており、ここでしかできない体験をしながら、環境について考えるきっかけとなっています。

 南三陸町戸倉地区に位置する南三陸・海のビジターセンターは、三陸復興国立公園や周辺の自然の情報を発信し、自然とふれあう機会を提供するために平成28年11月にオープンした施設です。館内には国立公園や南三陸の自然情報を掲示しているほか、スタンドアップパドルボード(SUP)やカヤック、スノーケリングなどのマリンアクティビティ、さらにはトレッキングガイドなど森・里・川・海のつながりを知ることが出来る自然体験プログラムを開催しています。

 今回紹介するのは志津川湾の海水から自分たちで塩を作る「塩工房」というプログラムと、豊富な海藻を使ってオリジナルの作品を作る「海藻おしば」プログラムです。

 「町の境境が『分水嶺』とほぼ一致する南三陸町。町に降った雨は山から川を伝い、海に注ぎ込まれます。町のなかの水がすべて志津川湾に流れ込むので、町で出したものは全部志津川湾に流れ込みます。志津川湾は、町で暮らす人々が自然を大事にしているかどうかのバロメーターとなる」と話すのセンター長の平井和也さん。いずれのプログラムも志津川湾の恵みを生かしたワークショップを行いながら、自然や環境について学ぶことができるプログラムです。

 ビジターセンターのレクチャールーム・実習室に分かれて、それぞれの体験をスタートします。「海藻おしば」をレクチャーするのは平井さん。
 「知ってる海藻の名前をあげてみて」と問いかけると、「わかめ」、「ひじき」、「のり」、「めかぶ」、「海ぶどう」など元気の良い反応が返ってきます。

 豊かな生態系を誇る志津川湾で現在確認されている海藻は現状200種以上。そのなかのいくつかを「海藻おしば」づくりに使用していきます。 
 「海藻は緑藻類や褐藻類、紅藻類と色の違いによって分類されます。 色の違いは、海藻の生息する水深、つまり太陽の光が届く量に左右され、浅瀬になるほど地上の植物に近い色、つまり緑色になり、深さにつれ褐色→紅色と変化するのです」と平井さん。ひと言に「海藻」といってもさまざまな種類や役割があることを学んだ生徒たちは、いよいよ「海藻おしば」作りへと進みます。

 はがきサイズの紙に、海藻の紅、緑、茶の色を活かし、ハサミで海藻を自在に切ったり、ストローでくり抜いたり、ピンセットで細かく調整しながら自由にデザインをしていきます。

 どんどんデザインしていく生徒、少し考え悩みながら手を動かす生徒と、自由にデザインできるからこそ、生徒ひとりひとりの個性が際立ちます。かわいらしい作品からアーティスティックなものまでそれぞれの個性が光る作品が完成。

 「かわいい!」、「楽しかった」と完成した作品を前に、生徒たちも自然に笑みがこぼれます。「海藻おしば」は、このあとセンターで乾かしてからラミネートされた完成品が後日学校へ郵送されるとのこと。届いた作品を前に、南三陸の教育旅行の思い出話に花咲かせることでしょう。
 海藻をふんだんに使用したワークショップを行ったからこそ、海の環境について、より一層身近に感じている様子。「楽しむだけではなく、今このようにして楽しむことが出来ている環境の多様性を今後も持続していくためにできることはあるのか?」。そんな問題意識を問いかけてプログラムは終了しました。

 「塩づくり」プログラムでは、志津川湾から汲んだ海水を、ろ過して煮詰める工程を繰り返します。「しっかり工程を踏んでいけば,それぞれお土産に持って帰れるだけの塩がとれます。がんばってやっていきましょう!」と声をかけるのはセンタースタッフの上田さん。
 4〜5人ずつのグループに分かれて、それぞれのグループで海水850mlを煮詰めていきます。グループで協力しながら作業を進めていくので、チームビルディングにも適したプログラムです。

 煮詰めている間の待ち時間は、ビジターセンターから防潮堤を挟んですぐの海辺でビーチクリーン活動を実施。20分ほどの活動時間でプラスチックやペットボトル、漁具などの細かなゴミを回収していきました。



 ビジターセンターに戻ってくると、いよいよ塩作りも大詰め。さらにろ過しながらフライパンで水分を飛ばしていきます。

 火にかけていると、徐々に普段私たちが見ている塩に近づいていきます。


 
 各班ともにそれぞれ持ち帰れるほどの塩が完成。少し味見をしてみると「おいしい!」、「しょっぱい!」、「いつものよりなめらかな感じがする」など感想も様々。
煮詰め具合や火の入れ方で仕上がりも差が出てくるようです。

 生きるためには不可欠な塩。それが海の恵みであることを理解し、その大切な海の環境が脅かされていることを知ること。そしてその課題から目を背けずに少しでも解決できるようなアクションを起こしていくこと。「塩作り」と「海岸清掃」を通してその大切さを学ぶ時間となりました。


 
「教育旅行に来てくれる人たちに、繰り返し繰り返し、今海で起こっていることを伝えていきたい。そして、なにか変わるきっかけを作っていきたい。そのきっかけを得たみんなが自分たちで何かできることを一つでもやってほしい。そして他の人たちにも伝えていくことで、少しでも次の世代が良くなるといいなと思っています」とセンター長の平井さんは話します。

 南三陸の誇る海をテーマに、ただ楽しむだけではなく、温暖化や環境のことについて考え、行動するきっかけとなるプログラムを教育旅行で取り入れてみませんか?

 

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