新・自然体験学習プログラム「山から学ぶプログラム」モニター実施レポート
■実施概要
間もなくリリース予定の自然体験学習プログラム・「山から学ぶプログラム」のモニターツアーを実施し、その様子をレポートしていただきました。
■「山から学ぶプログラム」とは……
“海とともに生きるまち”南三陸町。実は町の総面積の約8割以上が森林であり、適切で持続可能な森林管理を認証する「FSC国際認証」を取得しています。
プログラムでは、林業家と共にFSC山林において適正な森林管理が行われているかを実際にチェックしながら審査を体験していただきます。更にミニブッシュクラフト体験として火起こしを通じ、森のもたらす恵みやエネルギー循環について学んでいただきます。森林管理の重要性について実感していただけるプログラムです。
【日時】2022年1月17日 9:30~12:00
【人数】5名
■山から学ぶプログラム(モニターツアー)
最近、お菓子の紙パッケージや飲食店の紙袋、箱ティッシュなど、私たちの身近でFSCマークを見かけることが増えてきました。FSCマークが記載されている製品は、適切に管理された森の木材から作られています。
町の面積のおよそ8割を森林が占めている南三陸町でも、持続可能な林業を続けていくためにFSC認証を取得しました。FSC認証をこれからも維持していくためには、10の原則と70の基準に基づいた審査をクリアし、責任ある森林管理を続けていくことが必要です。
今回は、参加者自身が審査員になったつもりで森をチェックしながらFSC認証を学ぶ「チェックツリーツアー」と、火起こしを通して山の恵みと木のエネルギーについて学ぶ「ミニブッシュクラフト」を体験してきました。
山に到着するとまず、全員にヘルメットが配られました。ヘルメットを装着した後、株式会社佐久の佐藤太一さんと大渕香奈子さんから、山で活動する上での注意事項を説明いただきました。その後、グループに分かれて活動開始です!
FSC認証は、①森林や施業現場での現地審査、②関係者への聞き取り、③書類の確認によっての審査を行っています。今回のチェックツリーツアーでは、①森林や施業現場での現地審査を体験します。参加者には、FSC認証の審査項目の載ったチェックリストが配られました。今回は、佐藤さんの案内の下、10ある原則のうち4つの原則を審査してきました。
最初の審査は、『原則2 労働者の権利』です。現場で働く労働者の権利や安全が守られ、安心して働ける環境であるか、判断します。
実際の作業時の様子がわかるように写真を交えながら説明してもらいました。
「私たちは山で作業をする時、このオレンジの制服を着ます。なぜかわかりますか?これは、緑が多い山の中で目立つからです。間伐のときや山で遭難したとき、どこに人がいるのか判断しやすいようにすることで、労働者の安全を守っています。ヘルメットにフェイスガードやイヤーマフもついているので、チェンソー使用時の顔や目の保護、騒音を防ぐこともできます。これはもちろん会社から支給しています」
佐藤さんの装備や写真とお話から判断して、原則2労働者の権利の審査項目、
・労働者の権利や安全を守っている
・労働者が十分な安全装備を身につけている
・安全に伐採されている
の3つにチェックがつきました。
つづいて、『原則6 環境価値と環境への影響』の審査です。
木々が生い茂った山を指差しながら、佐藤さんは説明しました。
「あちらは持ち主が不明の山なんです。こちらの私たちの山と見比べて、何が違いますか?そう、真っ暗ですよね。あちらの山は木がたくさん生えていますが、地面の方まで太陽の光が行き届いていなくて、土壌がむき出しになっています。こちらの山は、木と木の間隔が空いているから地面に太陽の光も照らされて、いろいろな植物が生えています。私たちは木を育てながら、その下に多様な植物を育てているのと同じなんです。深さや広さが違う、いろんな種類の根っこが生えると、土の中にすきまが生まれるので、水が行き渡るんですよね。動物たちが住むためにも様々な植物が生えている環境を守っていくことが重要なんです」
「あちらに折れている杉の木がありますね。あれもわざと残しているんです。あの折れた木が虫たちの住処になって、その虫を鳥たちが食べに来るんです。だから、『虫のマンション、鳥の食堂』と呼んでいるんです。動物たちも一緒に使っている山だということにも配慮しながら木材生産をしています」
佐藤さんの話を踏まえて山の様子を見ながら、
『原則6 環境価値と環境への影響の審査項目』の
・環境を守り、悪影響を抑えている
・自然林が人工林や森林以外の土地利用に転換されていない
・動植物の重要な生息地に悪影響を与えないように伐採(または管理)がされている
にチェックがつきました。
そのほかにも、『原則10 管理活動の実施の審査』 、『原則5 森林のもたらす便益』 など、山を周りながら4つの原則の審査を体験しました。
自分たちが審査を体験することで、多岐にわたる基準に対して、林業の方々が様々な工夫をして管理をしていることを知ることができました。そして、山や木、動植物たちを尊重しながら森林管理していることがわかり、現場の方の責任感を強く感じました。
つづいて、大渕さんの案内の下、ミニブッシュクラフトを体験しました。
「私たちは丸太を生産していますが、商品にならない部分も出てくるんですね。そういう木は細かいチップにして、エネルギーに変換させて使うことができます。今回は、みなさんには自分の手で燃える材料を集めて、火をつけて、エネルギーを作ってもらいます。そして、エネルギーをしっかり管理するということも学んでもらいたいと思います。火は最悪の場合、山火事を起こして自然や命を損なってしまう要因にもなるので、責任を持って管理しましょう」
燃えるものの選び方と火付けのコツを教えていただいたあと、収集へ出発。雪が残る山道を歩きながら、乾いている杉の葉や小枝を集めていきます。あの植物はなんだろう?と自然を楽しみながら収集していくと、あっという間に葉や枝が袋いっぱいになりました。
どのように葉や枝を配置したら火が起こるか話し合いながら、集めた燃やすものを石からはみ出さないように積み上げていきます。
燃えやすい杉の葉を下に置いて、次に小枝を載せて…いよいよ、マッチを使って点火。杉の葉が一気に燃え、細い枝や木材に燃え移り、焚き火ができあがりました!寒さでかじかんだ手をかざして暖をとり、エネルギーのありがたみを実感しました。
「管理されてない山では、地面が暗くじめじめしているので、乾燥した葉や小枝がなかなか取れないんです。私たちはしっかり山を管理していきながら、みなさんが楽しめるようなこういう体験を作り出すこともしていきたいなと思っています。適切に森林管理していくことで、こうして実際に山にきてくれた方々に山の素晴らしさや恵みを知ってもらえたら嬉しいです」
今回のプログラムを通して、FSC認証を維持していくには、こんなにも多くの基準と審査項目があることを学びました。そして、これらの基準がどうして必要なのか知ることで、FSC認証への理解を深めることができました。
身近に見られるようになったFSCの認証マーク、このマークを見るたびに今回訪れた山にそびえ立つ木々を思い出し、その山を守っていく人たちの情熱を感じることでしょう。山を適切に管理し守っていく方々の熱意も山が生み出す大きなエネルギーだなと感じました。
■体験料等についてはコチラをご覧ください。>>>山から学ぶプログラム