慶應義塾大学(未来先導基金・南三陸プロジェクト)様【南三陸BIO施設見学プログラム】実施レポート
■実施概要
【日時】2023年9月8日 10:30~12:00
【団体】慶應義塾大学(未来先導基金・南三陸プロジェクト)様
【人数】22名
東日本大震災で甚大な被害を受けた南三陸町。災害からの復旧復興にあたって、「森 里 海 ひと いのちめぐるまち南三陸」をまちづくりのコンセプトに据え、2015年に生ごみや、し尿汚泥から電気や液肥(液体肥料)を生み出すバイオガスプラント「南三陸BIO」を開所しました。
町民が主役であり、関係するすべての資源の再資源化に成功している、全国的にみても稀有なバイオガスプラントであり、震災からの復興の成果のひとつということで、全国の学校や企業から多くの視察が訪れています。南三陸BIOを運営するのはアミタサーキュラー株式会社ですが、研修の受け入れは、教育旅行の拠点ともなっている「南三陸まなびの里いりやど」を運営する一般社団法人南三陸研修センターが行っています。
この日ガイドを務めたのは南三陸研修センターの佐藤慶治さん。
まずは「いりやど」の研修室に集合し、南三陸町の概要や東日本大震災の概要などの前提となるイントロダクションを行うことも本プログラムの特徴です。さらに東日本大震災の前後の町の様子をまとめたオリジナル震災学習映像を視聴し、初めて南三陸町に訪れた人にとっても当時のイメージが非常にわかりやすい仕掛けとなっています。
「なぜバイオガス施設の視察で東日本大震災について学んでいく必要があるのか?」「それは南三陸BIOが東日本大震災の反省と教訓を踏まえた施設であるからです。」「バイオガス施設というエネルギー施設の視察ではありますが、ハード面ではなく、ソフト面について主にお話をさせていただきます」と佐藤さんは話します。
震災からの復興の流れ、稼働に至った経緯、実現にあたってのコミュニティの力、そして町のビジョンでもある「森里海ひと いのちめぐる町」という持続可能なまちづくりについてなど、学びのポイントは多岐にわたります。
次に、「災害に強いまちってどんなまちだろう?」と佐藤さんは参加者に投げかけます。
「早く避難できるまち」
「避難場所が過密にならないように事前に考慮されているまち」
「もしまた津波でやられてもいち早く復旧できるまち」
「逃げやすいような広くてまっすぐな道路が整備されているまち」
など、さまざまな意見があがります。もちろんすべて正解です。そうしたなかで南三陸は「生きるために必要最低限なものを自給できるようにする」という目標を掲げ、生ゴミという未利用資源を活用して生み出そうという取り組みが「南三陸BIO」なのです。
東日本大震災の概要や南三陸BIOについての基礎的なイントロダクションを行った後は、バスに乗って実際の施設へと移動します。南三陸BIOがあるのは志津川の保呂毛地区。さんさん商店街から車で5分ほどの場所に位置しています。
南三陸BIOに到着すると、ゴミの搬入から最終の分別、そしてメタン発酵する一連の流れ
に沿って見学をしていきます。
「みなさんの住んでいる地域では生ゴミはどのように処理していますか?燃えるゴミに入れているという方は手を挙げてみてください」「燃えるゴミに入れている方は、燃えるゴミのなかで生ゴミが占める割合ってどのくらいか想像つきますか?」と参加者自身の生活に置き換えて、自分ごととして考えられるような質問を投げかけながら視察は進んでいきます。
この日はちょうど生ゴミが搬入されていたタイミングだったため、収集された生ゴミを見てみることに。「うわー!ちょっと怖いな」「これ実際にやるとなると大変だし、めんどうだよね」と思わず本音も漏れます。
「南三陸BIOは住民が主役のエコシステム。住民が家庭で分別をしてくれることによってはじめて成立するシステムです。住民の協力が欠かせないので、役場職員を中心として60回以上にわたる分別説明会を実施してきました」
2015年の開所当初は異物も多かった南三陸BIOですが、現在は全国的にみても少ない異物混入率で稼働できています。ITを駆使した分別状況の可視化やペイフォワードという行動心理学をもとにした実証実験など、さまざまな施策が行われていることも視察のなかで話題として上がります。
副産物である液体肥料も見学。実際に匂いを嗅いでみたり、畑に撒いてみたりすることで視察がより濃く印象に残っていくことでしょう。残り時間の質疑応答も話題が絶えないほどみなさんにとって興味深い視察となっていたようです。
「南三陸モデル」とも言われるこの循環システムは多くの企業や大学、地域団体から注目を集め、視察申し込みも多いそうです。
東日本大震災の反省や教訓をどのように生かしているのか?持続可能なまちづくりとは?地域資源循環とは?地域経済とは?住民参加型のまちづくりとは?このような問いに少しでもアンテナが反応したみなさんにはとても有意義な視察となるでしょう。