仙台市立西山中学校様1年生「震災語り部講話・タコロン絵付け体験」実施レポート
■実施概要
【団体】仙台市立西山中学校 1年生
【日時】2021年5月20日 10:30~15:00
【人数】135名
■実施プログラム
【語り部による学びのプログラム】
最初の自己紹介の際に、語り部の芳賀タエ子さんから「東日本大震災で自分の兄弟を失った」とのお話があった瞬間、聞いていた全員が息を呑みました。
本日の参加人数は135名様ですが、密を避けるため席数が492席の会場を用意。隣の人との間隔を開けて座っていただきました。座席とステージも充分な距離があるので、語り手の芳賀さんは語り部のときだけマスクを外してお話されました。
南三陸の紹介からはじまり、風土や名産を写真やデータを示しながらお話されました。
そして、震災時の町の様子、ご自身が見聞きした経験を当時の気持ちと一緒に語っていただきました。
学生のときにチリ地震津波を経験した芳賀さん。
津波が起きたときの様子を知っていたので、地震が起きた時にどこへ避難すればいいのか、家族で話し合って決めていたそうです。
しかし、東日本大震災が起きたとき、逃げた先で津波の様子を見て呆然としたと語ります。
芳賀さんが語られたお話で特に印象的だったのは、お孫さんとのお話。
東日本大震災の2日前に地震があった際、小学4年生のお孫さんに「下校する最中に地震が起きたときには、家に帰ってきちゃだめだよ。帰ってきても誰もいない。周りの大人たちや学校の先生に従って高いところへ逃げなさい」と言い聞かせたそうです。そのため、東日本大地震が起きた時、お孫さんが一緒にいなくても「孫は高いところに避難してくれている」と信じ、自分のことを第一に考えて逃げることができた、と仰っていました。
孫にチリ地震で経験した教訓を伝えたことで、地震が起きた時に一緒にいなくても無事だった。そんな経験があったからこそ、芳賀さんは自身の震災時の経験を語ることで、多くの人の防災力の向上に繋がってほしいと思い、語り部を始めたそうです。
芳賀さんが見聞きした経験を自身の感情や当時の葛藤を交えてお話されていることを、生徒さんはメモをとりながら真剣に聞いていました。現地の人の体験談を聞くことで、事前の調べ学習では分からなかった当時の状況を知ることができたと話していました。
■実施プログラム
【Yes工房タコロン絵付け体験】
会場に入ると、スタッフが一人ひとりの手にアルコールを振りかけます。
中学校の体育館を改装したワークショップ会場で、定期的に換気をしながら体験を行いました。体験の前に、代表の大森丈広さんからYES工房の取り組みについて動画を交えた紹介がありました。
YES工房は東日本大震災後、町民の雇用と交流の場づくりを目指して立ち上がりました。
生活の場を失い、避難所にいるしかなかった人たちにとって、夢中になって何かに取り組めるような場所が必要だったそうです。
そこで、南三陸名産のタコをモチーフとした合格祈願の文鎮『オクトパス君』の製作を始め、現在ではまゆ細工や南三陸産の木を使ったノベルティを製作しています。
そして、観光や教育学習でいらっしゃった方を対象にプログラムを提供し、南三陸の魅力を伝えています。
いくつかあるYES工房の体験プログラムの中で、今回はタコロンの絵付け体験を行いました。タコロンとは手のりサイズの陶器でできたオクトパス君です。
白いタコロンに水性マーカーで色を塗り、自分だけのタコロンを作る体験です。
今回、生徒さんは体験前にどんなデザインにするかを考えてきてくれたようです。
体験が始まると、思い思いに色を塗っていきます。はちまきの細かい部分をつまようじで塗り始める人もいれば、太いマーカーで全体を大胆に塗りつぶしてみる人も。
周りのスタッフに尋ねながら、もくもくと色を塗っていきます。
ある生徒さんは、たこ焼きをイメージしたデザインを事前に考えてきました。
用意されたマーカーに茶色はなかったのですが「オレンジと黒を混ぜたら茶色が作れる」というスタッフのアドバイスを受け自分で色を作って塗っていました。生徒さんが塗り終わった頃、「いい茶色作ったね、たこ焼きらしいよ」とスタッフが声をかけていました。
この様子から、YES工房では体験を通して多くの人と交流を重ねてきたことが垣間見えました。
参加した生徒さんからは、自信作ができた、自分の思う通りに作れて満足した、難しかったけど思い出に残ったと、夢中で取り組んだことがわかる感想がたくさん聞けました。
交流を重ねて南三陸に元気を生み出してきたYES工房のストーリーとともに、自分が作ったタコロンを持ち帰ってくれたことでしょう。