「帝京大学」オンライン語り部レポート

実施概要

【団体】帝京大学・外国語学部
【日時】2021年1月19日 13:00~14:00
【人数】9名 (2年生)

東京都板橋区(本部)に位置している帝京大学は、1966年に設置された私立大学です。
今回は初めて当町のプログラムをご利用されました。当時10歳前後の学生に、震災発生時から現在に至る南三陸の歩みについて知ってもらおうと、先生から申し込みを頂きました。
 

イベントの企画・目的

今回の依頼者は、帝京大学でグローバル・スタディーズ演習Iを担当する大塲麻代先生です。震災から10年という節目に、学生たちが学べることはないかとの思いから、オンライン語り部を取り入れた授業を実施されました。復興途上である現地の声に耳を傾ける機会を提供することで、学生たちが日々の行動や思考を見つめ直す機会になればと実施されました。

実施プログラム

語り部さんから当時の体験談をお話しする「震災語り部講話・オンライン」を実施。
 ※「震災語り部講話・オンライン」は、2020年7月に新しく誕生し、その名が示す通りオンラインのビデオ通話システムを介し、語り部から受講者の皆様に東日本大震災の体験談や、現在に至るまでの復興の道のりをお話させていただく講話スタイルのプログラムです。「修学旅行等の事前学習・課題研修・防災学習」でのご利用をご提案します。クラスごとの複数回線接続も可能です。

体験の様子

■プログラムの流れ

 (1)オープニング
 (2) 南三陸の概要説明
 (3) 震災当時の被害状況、復興までの道のり
 (4) 個人としての震災の体験談
 (5) 質疑応答

 まずは、語り部である菅原清香さんによる南三陸町の説明から始まりました。町の地理や歴史、産業、旅行で人々が訪れる場所の紹介など、実際の写真を見ながら学びました。菅原さんは長年バスガイドとしての経験があり、初めてのオンラインでの講話をものともしない、大変分かりやすい説明をされました。

 南三陸町は、東日本大震災の津波で多くの犠牲者が出た町であり、2011年3月11日の出来事や被害状況、そして現在までの復興状況について語られました。当時、防災対策庁舎から「高い所へ避難してください」と繰り返し流れた放送の声が途中で途切れ、「何が起きたのか分からなかった」という臨場感のあるお話には、学生さんも息を呑んで聞き入っていました。

 震災前と震災後の変わり果てた町の様子を見ながらの説明は、改めて日常の風景が一瞬にして一変したことを認知するに至りました。震災後、全国の方々から支援を得て開催した南三陸町独自の福興市は、人との繋がりや産業の盛り上がりを取り戻すシンボルになった取り組みとして紹介されました。

 講話の最後には、菅原さん個人としての体験談を語ってくれました。ご自身の母親は震災後未だ行方不明で見つかっていません。「これから親孝行しようと思っていたのに」そのようなタイミングでの出来事でした。学生さんへも、日頃から親への感謝を忘れないことを改めて伝えていました。

 質疑応答の時間では、オンラインで少人数ということもあり、学生さんから積極的な質問が寄せられました。「必需品でありながら不足しがちで助かった支援物資は何でしたか」や「震災を経験したからこそ思う“幸せ”とは何ですか」など様々な視点からの質問がありました。質問を通して、講話では触れられなかった内容や復興までの道のりで感動した秘話なども聞くことができました。

語り部さんの感想

 今回語り部を務めてくださった菅原さんに、このオンライン語り部を通して伝えたかった事を聞いてみました。「現在起こっているコロナの状況は、震災の時から得た教訓と似ています。一人ひとりが自分の命を大事にすること、また、誰かに言われたからではなく、自分で判断して行動していくこと。この講話を通して、改めてそういったことに気付いてくれたら嬉しいです」という思いを話してくださいました。

 このコロナ禍のタイミングだからこそ、学生さんにとっても身近な人との関係や命について、改めて考えられる良い機会になる講話だったと思います。

先生の感想

 今回、震災から10年を振り返る契機としてオンラインでも提供していただけたことは、学生にとっても大変貴重な経験になり、有り難く思います。特に、コロナ禍で現地へ足を運べない中、震災を経験された方から直接当時の様子を伺えたことは有意義でした。内容を受けて、長期的な視野ですが、学生の思考にプラスの変化があれば嬉しく思います。

学生の感想

 今回のプログラムに参加した学生さん3名から、感想をいただきました。

◎自分自身が東日本大震災を経験してから、防災に対する関心は高くなりました。当時小学4年生でしたが、母親にお願いして防災グッズを完璧に揃えることをはじめ、今でも継続的に取り組んでいます。そのような中で、直接被害に遭われた方のお話を聞けたことは、大変貴重な経験になりました。

◎当時は小学4年生で埼玉県に住んでいたということもあり、身近に感じることができませんでした。初めて語り部さんからお話を聞く機会をもらい、今まで考えてこなかった自分が情けなく感じたと同時に、命について大事にしなくてはと、改めて実感しました。

◎今回の語り部さんのお話で一番印象深かったのは、「命を無駄にしない」という言葉でした。自分の命を自分自身で守ってこそ周りの大切な人たちも助けられると感じ、改めて自分の命を大事にしながら生きていこうと思いました。また、震災当時に日常生活を奪われるという被害がなかったからこそ、改めて今回のお話から当たり前の日常の有り難さを考えました。様々なことを考え直す貴重な時間になりました。

最後に・・・

 オンライン語り部を通して、先生・学生さん共に口を揃えて貴重な経験だったと話してくれました。直接現地でしか伝えられないこともありますが、オンラインでも臨場感は伝わり、聞く側と伝える側が身近になって活発なコミュニケーションが図られている印象を受けました。目の前にしてしまうと聞けないような質問も、オンラインだからこそ聞くことのできる深い学びであったのではないかと思います。

 ぜひ多くの方に体験していただき、震災を通して自分自身のことや周りのことを考えるきっかけにしていただけたらと思います。

ライター

   西田 早織氏(にしだ さおり) 

埼玉県出身。転職を機に南三陸町へプチ移住。学習院女子大学卒業後、外資系ブランド販売員を経て、現在myProduct株式会社の地域コーディネーターとして南三陸と関わる。地域の産業の担い手と共に、観光体験企画や大手企業との取り組みをコーディネート。地元ではボランティア情報誌の編集長としても活動。

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